第9章 ディーフ in the hotel 第10章はこちら
ホテル内に入ってきたディーフを見つけた従業員が慌てて駆け寄ってきた。 「すみません。当ホテルは衛生上の問題で動物の持ち込みをご遠慮していただいております。」 レイはニヤっと笑いながら 「We are American.We cannot understand you.俺たちはアメリカ人だよ。日本語はわからねぇ。」と言いずんずん、 フレイザーを引っ張って入っていく。綱をつけたディーフもまるで本物の盲導犬のように従順におとなしい。 今度は別の従業員が来て英語で同じように説明をした。 するとレイは自信タップリにこう言った。 「Can' you see us? He is blind. He needs a guide dog. おめえさんこれが見えないのかよ。彼は目が不自由なんだ。彼には盲導犬が必要なんだよ。」 「Sir, Is he blind? お客様、この方が目が不自由なんですか?」従業員は疑心そうな顔をしてサングラスをかけてボーッとしているフレイザーを見つめる。 R:「Apparently. As a batああそうだよ。ほとんどコウモリだ。」 従:「He didn't appear to be so at the check-in counter .先ほど受付されたときはそうは見えませんでしたが…」 R:「Hey,you're criticizing the handicapped? Japanese hotel refuse to stay for the physically challenged. おい、おまえ、身体障害者を差別するのかよ。日本のホテルっつうのは体に障害があるのは泊めないってか?えっ?。」 とロビー中に響き渡るほどに騒がしくまくしたてた。 ロビーにいる人の視線がいっせいに集まる。 すると奥から上司らしき人が慌てて飛び出してきてレイをなだめた。 「We're sorry about any inconvenience we've caused you. Please accept our sincerest apologies. A warm welcome Mr. Fraser. We are glad you choose our hotel.! Please enjoy your stay. 私どもの不手際をお許しください。フレイザー様、大歓迎です。当ホテルをお選びいただき有難うございました。どうぞおくつろぎくださいませ。」 R:「Alight.ああそうかい。」 どうやらレイの作戦はうまくいったようである。 なんとか承認を得た3人と一匹はそそくさとエレーベーターに乗り込んでいった。 ----エレーベーターの中 R:「What a relief. あーほっとした。」レイがやれやれという表情をする。 F:「I feel guilty. なんか良心がとがめるよ。」サングラスをはずしながらフレイザーは言った。 R:「As a matter fact we have the handicapped. Only difference is who is the handicapped ハンディキャップがあるのは事実だろ。それがおまえかこの狼かの違いだよ。」 F:「…・・」フレイザーは返す言葉がない。 チン♪ フレイザーの泊まっているフロアに着き3人はエレベーターから降りた。 F:「Ray, thank you very much. I can handle it from hereレイ、ここからはなんとかなるよ。本当にありがとう。」 フレイザーはサングラスをレイに返すと、次にフレイザーは佐都子のほうに向きを変えた。 S:「 Satoko…・I appreciate you putting yourself out for me. それに佐都子、僕のために時間を費やしてくれて本当にありがとう。感謝しているよ。」 そうフレイザーが言い終わったときである、さっきまで大人しくしていたディーフが急に「キュぃ〜ン。」と甘えた声を出し、鼻を鳴らした。 見るとディーフがうるうるした目でフレイザーを見つめている。 F:「Oh….I almost forgot that. you must be hungry. But…ああ忘れていた。おまえハラペコなんだろう。だが…」 一難去ってまた一難。ディーフの食料などフレイザーは持ち合わせていなかったのである。 すると佐都子がおもむろにカバンからゴソゴソと何やらお菓子のような袋を取り出した。 S:「Does it help you?こんなものしか持っていないんだけど…」 それは"かっぱえびせん"だった。会社のおやつ用にたまたま持っていたのである。 F:「Thank you kindly.」とフレイザーがうれしそうに受け取った。その瞬間だ… ヒュイーン …フレイザーの手から袋を奪いとって、ディーフは袋ごとバクバク食べ始めてしまったのである。 あっけにとられる3人。 食べ終わったディーフは今度はトコトコとレイの方へ近寄っていた。そしてレイの右ポケット辺りの臭いをクンクン嗅いでいる。 F:「Ray?」フレイザーが目くばせした。 R:「Oh Great.全くもう…」レイがしぶしぶポケットの中からキットカットを出して与えた。グシャグシャと箱を破壊するとあっという間にディーフはペロっと一箱平らげてしまった。 R:「Is he a real wild animal? こいつ本当に野生の動物かよ?」 満足したディーフはペロペロと口の周りを舐めている。 F:「To tell you the truth, I was wondering could you do me a favour あっそうだ、実を言うとレイ、もう一つお願いがあるんだけど…・」 フレイザーが丁寧な物腰で話し始める。 R:「Your favours are all used up. これ以上願い事があるっていうのかよ〜」 もうレイはたくさんだーみたいな顔をして眉を下げた。 F:「I hope you would walk Satoko to the station.佐都子を駅まで送ってほしいんだ。」 S:「ええっ(大汗) いいですよ。You need not.」 佐都子は頭と手をブンブン振って断った。 一方、先ほどまでしかめ面をしていたレイだが表情が和らいでいる。 R:「It's just a walk in the park. お安い御用だ。」 それを聞いた佐都子は即座にレイにこう言った。 S:「No,No, You don't walk across the park. 公園なんか通りませんよー。」 レイとフレイザーはキョトンと顔を見合わせると、いきなりレイがハハハと大爆笑しはじめた。 (えええ?何なの?またなんか間違った英語だったのかなぁ?) 佐都子は何のことかわからない。 そんな佐都子にそっとフレイザーがかがんで耳打ちをした。 「Satoko "walk in the park"means "easy". 佐都子、これはね「簡単」って意味なんだよ。」 それを聞いた佐都子は真っ赤になってしまった。 しかしそれはイディオムを知らないことだけが理由ではなかった。 あまりにもフレイザーの声がソフトで優しくて・…そして近すぎたから…・。 *** 「You are very funny. おまえ、面白いヤツだな。」 レイはまだ楽しそうに笑っている。そしてエレーベーターのボタンを押した。 「Good night, Fraser.」 レイと佐都子を載せたエレベーターの扉が静かに閉じた。 ***** つづく (2003.4.13) Back 無事にディーフはホテルに入れました。よかった。よかった。 続きはまた来週 (^.^)/~~~ |