Round-Robin From Japan  第10章 帰り道        第11章はこちら

エレベーターから降りたレイと佐都子は人影もまばらになったロビーを抜け玄関を出た。
三月の夜の空気はまだ冷たい。レイはブルっと身震いをするとコートの襟をたてた。
そして振り向いてこう言った。
「wait here
ここで待ってろ。
「えっ?」
首をかしげる佐都子を残し、ホテルの左側の建物のほうに足早に消えていった。

(あれっ?どうしたんだろう?トイレかなぁ?)
玄関に立ちすくむこと5分…まだレイは姿を見せない。
(トイレで倒れているのかなぁ?でも男子トイレに確かめにいくのもなぁ?)
と独り言を言っていると突然、キキーッ という音とともに
目の前に緑の大きな車が現われた。

「Hop in. 
乗れよ。
運転席にはハンドルを握ったレイがいる。
(えっ?だって新宿駅はすぐそこなのに…)佐都子は乗るのをためらった。
「I said" hop in". Are you deaf? 
乗れって言ってんだよ?聞こえないのか?
レイが声を強めて言う。またレイの後続の車がクラクションを鳴らしてせきたてる。
佐都子は気乗りがしなかったが、ゆっくりドアを開けて車の中に入っていった。

車の中には静かな心地良い、音楽がかかっている。
(♪LOCK, STOCK AND TEARDROPS)

が…・佐都子がドアを閉めるやいなら…・いきなりレイはアクセルを踏んだ。
(ギュイーン〜) 車がものすごいきおいで飛び出した。

「わあーぉ!」 驚いた佐都子は思わず叫んでしまった。

「sorry」レイがいたずらっぽく笑う。その笑顔がなんとなくかわいらしい。

「Where are you living? 
どこに住んでいるだよ?
一つ目の信号で止まったところでレイが聞いてきた。
「 In Japan…・・
日本。
「 Are you kidding?おちょくってんのかよ?

(だって、どうせ言ったって知らないに決まっているもの…)
佐都子は頭の中で言い訳をしながら「 I live in Shinyurigaoka.
新百合ヶ丘ってとこですけど。」
とぶつぶつ消えそうな声で答えた。

R:「I know. I know.あー知っている
S:「えええ???」佐都子は驚きのあまり座席から滑り落ちそうになった。

R:「As a matter of fact ,The gangster I chased not long ago was killed around there.
The corpse was awful. it was shot all over the body like a Swiss cheese.and covered with blood.
俺がつい最近まで追っていたギャングがそこらへんで殺されたんだよ。
死体はひどかったなぁ。体中ボコボコに銃弾で撃たれていてまるでスイスチーズのように穴だらけだったよ。それに血みどろだった
。」
S:「……・・」
そのグロティスクな返答に佐都子はどう答えていいかわからない。

S:「…・Ray,I appreciate your offer, I really do but you don't have to do this. I'm sure I can walk from here to the shinjyuku station. fine.
 あのぅ レイ・・申し出はありがたいのですが…、送っていただかなくていいですよ。ここから駅まで歩けます。ほんと大丈夫ですから…」と上目使いでレイの様子を見た。

ギュイーン…・またもやレイがアクセルを踏んだ。
「Look.Beauty like this is one in a million. This is a 1971, mint condition Buick Riviera. This is rare chance to ride.OK? 
いいか、これは1971年のビューイックリヴィエラだぞ。めったに乗れない車だ。」
「……」
佐都子はその車がどんな価値があるかわからない。しかし車中がピカピカに磨かれていてマニュアルさえビニール袋に包まれているところをみるとよほど大切にしている車だろう。

結局、佐都子はそのままレイの車に乗り、送ってもらうことになってしまった。

夜の摩天楼の中をハイスピードのリビエラが走り抜けて行く。

                                       
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レイはリヴィエラをシカゴから持ってきたんでしょうかねぇ?まあそのことについてはまたいずれお話しましょう。
また来週 (^.^)/~~ (2003/4/20)