第11章 あーァ? 第12章はこちら
東京ってこんな街だったのだろうか? リヴィエラから見える景色は何もかもが新鮮だった。 眼下に見える街の明かりはチラチラとまたたきまるで滑走路から飛び立っているのような感じがする。 佐都子がそう思いながら窓の外の景色に酔いしれていると、レイの静かな声が沈黙を破った。 「I'm sorry for causing you so much trouble.… tomorrow. 明日は悪いな。付きあわせて…・。」 先ほど大声でわめきたてたレイの声とは思えない、うって変わってのしおらしいトーンに一瞬耳を疑う。 何事かと思い、レイを見ると彼はまっすぐ前を向きシリアスな表情でハンドルを握っている。 (別にかまいません…。)佐都子はそう言おうと思ったがうまく言葉がでない… カーステレオの音楽だけが空間に流れる。そしてレイが続けた。 「My father has been dead for five years. I know how he must feel. I mean if it was my old man? Well, if it was my old man, I'd go to great lengths to find his killer. So I want to do something to help him. 俺もおやじを5年前に亡くしたからな…。あいつの気持ちが痛いほどわかるんだ。自分の親父なら…。どうしても真犯人を突き止めたくて必死なんだと思うよ。だからなんとかしてあげたかったんだ。」 「Father? The dead Mountie was his father ? えっ?お父さん?殺された騎馬警官ってフレイザーのお父さんだったんですか?」 佐都子は驚いた。殺された騎馬警官の犯人を追っているとは聞いていたがそれがまさか彼の父親とは全然知らされていなかったのである。 「Oh my gosh. He hasn't told you about that. あれっ(汗) あいつ、あんたにそのこと言ってなかったのか…やばー。」 レイが悪びれたような表情で口を曲げる。 「フレイザー…かわいそう。」 詳しいことは佐都子にはわからなかったが、明るく振舞っていたフレイザーがとても不憫に感じてかわいそうな気持ちでいっぱいになってしまった。 R:「Not another word of this to Fraser, alright. Keep this between you and me. なぁ。俺が言ったことは黙っててくれよ。俺とあんたの秘密だ。いいな。」 レイは言ってはいけないことを言ったと感じたのだろうか、フレイザーには言わないように頼んだ。 車の中に重い空気が流れる…・。 レイはすっかり気の沈んだ佐都子を見て話題を変えることにした。 R:「What do you do? あんた、何やってんの?」 フレイザーのことで頭がいっぱいな佐都子は半分涙声でこう答えた。 S:「I'm riding on a car. 車に乗っているんです。」 佐都子のまぬけな答えにレイはガクっと頭を下げる。そして向き直ってこう言った。 R:「Hey, I know, You are riding. I'm not asking "what are you doing now", I'm asking "What do you do for a living?" おいっ、そりゃ見りゃわかるよ。"今、何をやってんのか?"って聞いているんじゃないの!"職業は何かって聞いてるんだよ"…もう。」 さっきの威勢の良いレイに戻った。 そして今度はぶつぶつ独り言を言っている。 「He should have picked up the girl who speaks English well. I'm worry about tomorrow. なんでこんな英語のできない奴をフレイザーはひっかけたんだよ。まったく…。明日、ほんとに頼りになるのかよ…。」 レイはどうせ聞こえないだろうと思って言ったのだろう。しかし何故だかその言葉だけは佐都子には聞き取れた。 「I heard you. 聞こえてますけど…」(ーー;) レイが一瞬固まる。そして豪快に笑い、出会った頃の漫才のような会話がまたはじまった。車内の空気がだんだんやわらいでいく。 ちょっとふくれた佐都子にレイは面白がって話を続ける。 R:「You're in love with Fraser, aren't you? あんた、フレイザーのこと好きなんだろ?」 (えっー? (@_@) 何よレイってば唐突に!)佐都子は衣を着せない言葉にぎょっとなった。 S:「…・・」 R:「Do I hit the nail on the head? どうだ、図星だろ?」 S:「NO. 違います!」 佐都子は声の調子を強める。 R:「I do notice. 俺にはわかるぜ。」 S:「I say NO! Give me a break. 違うって言っているじゃないですか。からかわないでください。」 R:「Ah… あ〜ァ」と レイは"ふーん"みたいな調子で顔を斜めにして意味ありげなあいづちを打った。. S:「Ah? What do you mean 'Ah'. なんですかその"あーァ"っていうの?」 R:「Oh nothing, just 'Ah'. いや別に?ただの"あーァ"だよ。」 S:「No, you must mean something by 'Ah'. いいえ、何か意味のある"あーァ"に聞こえますけど・・。」 R:「Ah…。あ〜ァ」 S:「Will you stop with the Ah ? すみません。その あーァ っていうのやめてくださいませんか?」 ムキになっている佐都子がおかしくてたまらないレイはクククッと笑いをこらえている。 そうこうしているうちにあっという間に川崎インターについて車は高速を降りた。 そこから10分もたたたいうちに佐都子の家の玄関前にリヴィエラはとまった。 R:「See you tomorrow. じゃあ、明日な。」 S:「Thank you for your lift. はい。送っていただいて有難うございます。」 佐都子はそう言いながらペコリと頭を下げた。 R:「just a walk in the park. おやすいごようさ。」 レイはそう言ってクスッと皮肉っぽい笑みを返した。それはさっき佐都子が知らなかったイディオムだったからである。 S:「……。」 レイは片手をサッとあげ、アクセルをギューイ〜ンとふかした。そして車は暗闇の中、すっとんでいった。 リヴィエラが段々遠くなって、小さくなる。やがて、ウインカーを点滅させて、角を曲がって見えなくなった。 佐都子の目の前にはいつもの変らない住宅街の暗闇が戻る。 「いったい、なんていう一日だったんだろう…・。」 不思議な一日の終わりに佐都子は溜め息をつかずにはいられなかった。 Back さぁて、明日はいよいよ潜入捜査です。果たしてどうなることやら・・・ 続きはまた来週 (^.^)/~~ (2003/4/27) |