Round-Robin From Japan  第8章 ディーフ登場            第9章はこちら

食事を終えた3人は店を出て、フレイザーの宿泊するホテルに向かった。

 ホテルに30mほど近づいたところだろうか、新宿警察署の植田警部補と婦警のイレーンがホテルの前に立っているのが見えてきた。暗がりでよく見えないが彼らの横には何やらモコモコした物体が置いてある。
するといきなりその物体はフレイザー達の方に急突進して来て、フレイザーの胸に飛び込んだ。
「バウッ〜」
あまりにも突然の出来事でレイも佐都子もあっけにとられて動けない。まるで白いモップのおばけが出現したように見えたからだ。

「Dief! Dief! 
ディーフじゃないか!」フレイザーが驚いたように叫ぶ。
よく見るとその物体は白い3歳ぐらいの雄のハスキー犬のようだった。その犬は立ち上がって両手をフレイザーの腰に回し、尻尾をちぎれんばかりにブンブン左右に振って喜んでいる。
明らかに飼い犬が飼い主に対する行動と同じだ。

「What the hell is going on? 
一体全体何が起こったんだよぉー?」レイは両手を大きく広げるパフォーマンスをした。

すぐさま、植田警部補とイレーンが駆け寄ってきた。
「すまんすまん。ヒモを放しちまった。」植田警部補が悪びれたように言うと、そばにいたイレーンがそれを訳してくれた。
そして息を切らしながら植田警部補は説明を始めた。
「君が帰ってから署にこの犬が届いたんだよ。受取人はフレイザー君、君だ。そして送り主はカナダ騎馬警察 フロビシャー巡査 となっておる。我々もさっぱりなんのことかわからないんだが…とにかく署で飼うわけにもいかないから届けにきたんだよ。…・あっそうそう、これが受け取り証。」

そう言って、植田警部補がディーフに抱きつかれたままのフレイザーへ用紙を差し出した。
そこには"警察犬扱い"と書いてある。よって、検疫の拘留はなかったようだった。

「じゃあ 我々は行くよ。月曜日にでも署に寄ってくれ…。」
そう言い残すと、植田警部補達は逃げるように暗闇の中に消えて行った。

ホテルの玄関の前に立ちすくむ3人と一匹。

F:「Oh Dear…・
なんてことだ…・」フレイザーが困ったようにつぶやいた。
R:「have you brought over your dog? 
お前、飼い犬を連れてきたのかよ?
レイが呆れている。
F:「Actually he's more of a wolf. 
いや狼なんだ。
R:「WOLF! 
狼だぁああ??」 レイと佐都子はその一言にぶっとんだ。
レイ達の驚きをよそにディーフはすっかり落ち着いてフレイザーの横でおすわりをしてる。

R:「Why do you take a wolf?
なんで狼を連れてきたんだよ
レイはディーフを横目で見た。

F:「I have no idea…・
僕にもわからない。」

フレイザーは下を向き、額に手を当てて考えている。フロビシャー巡査は何故、日本にディーフを送ったのだろうかと…・・フレイザーは頭の中で彼との会話を振り返ってみた。確かにディーフを送るように頼んだ。しかし、それは新宿警察署ではなくイヌイットの友人エリックへである。フレイザーが不在の間、面倒を見てもらうためだ。
そのときエリックの住所の紙もフロビシャーに渡したはずだ。

2,3秒後フレイザーは顔を上げ、何かひらめいたような表情をした。

…・エリックの住所と一緒に自分の行き先、すなわち新宿警察署の住所の紙も渡したのを思い出したのである。
きっとフロビシャーはそれらを混同してしまったに違いない…・

F:「I think it was a simple mistake.
単なるミスだ。」
フレイザーは深い溜め息をついた。

明らかにホテルにディーフは入れてもらえない。フレイザーはディーフを見つめたまま途方に暮れてしまった。

しばらくして、うつむいていたフレイザーがおそるおそる上目使いでレイを見た。
R:「What? 
なんだよ?」
レイはいやーな予感がしたのか眉間にしわを寄せる。

F:「Could you do me a favor…・
お願いがあるんだけ…・」今までのフレイザーの歯切れよさがない。
F:「I was wondering if you would mind keeping my wolf for me? 
よかったら僕の狼を君のところで預かってくれないかな?」
フレイザーの突拍子もないお願いにレイは目をまるくした。
R:「Are you kidding ? Forget it!
冗談言うなよ。」
レイは怒って断る。

フレイザーはまだ上目使いでレイを見ている。
F:「For god's sake…・only one night 
お願いだよ。一晩だけでも。」
R:「I said NO! NO! NO! NOOOOO! 
絶対ノーだ。ノーと言ったらノー!」
レイは首を突き出して強い調子で言った。

フレイザーはやっぱり…という表情でしょぼーんとしてしまった。

次に、フレイザーは佐都子の方を見た。

「へっ?!」 今度は佐都子に矛先が向けられたようである。
「だ、だめですよ〜うち、もう犬がいるんですから…・」
動転した佐都子は全部、日本語で喋ってしまった。
日本語がわからないフレイザーだったが佐都子の嫌そうな顔と引いている姿勢で答えはわかったのだろう…・何も言わずに納得した。

ホテルに入れない3人を何台もの車がライトで照らして通り過ぎてく。

****

突如、レイはサングラスをポケットから出してフレイザーに手渡した。

R:「Hey, Fraser, Wear this.
おいフレイザーこれかけな。」
F:「Excuse me? I fail to understand what you mean. 
レイ、言っている意味がわからないよ。」
R:「You'll have to pretend to be a blind man.
目の見えないふりをするんだよ。そしてこいつは盲導犬だ
He'll be a guide dog」
F:「No,I couldn't do that. and he can't work as a guide dog because he is deaf.

if anythig He needs s guide dog.。
そんなことできないよ。それに、彼は盲導犬として働けないよ。耳が聞こえないんだから

どちらかといえば介助犬が必要なのは彼だ
。」
R:「Deaf? Oh great. that's not point. You want stay with your wolf? 
デフなのか?全く〜 もういいや。そんなのどうでもいい。一緒にいたいだろ。
F:「Well,yes,but I'm not about to lie to a hotel clerk.
でも…ホテルの人たちに嘘はつけないよ。」
R:「Alright then don't say anything.I'll do the talking
わかった、おまえは何も言わなくていい。おれが話すから。」

そう言ってレイはフレイザーに無理やりサングラスをかけさせ、ディーフの綱を持たせる。

レイに腕を掴まれたフレイザーはディーフを引っ張りながらヨロヨロと中に入っていった。

(うまくいくなかなぁ?)
佐都子も心配になって後をついていくことにした。
                                       
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さーて、ディーフはホテルに入ることができるのでしょうか?続きはまた来週 (^.^)/~~ (2003/4/6)