Round-Robin From Japan  第6章 Lay or Ray?        第7章はこちら

 夕方のホテルのビジネスセンターは混み合っていた。よって部屋の奥のパソコン一台が空いているのみである。フレイザーは佐都子に椅子をすすめると後ろから中腰になってパソコンのスクリーンを覗いた。

(ぎょっ(@_@) こ、こんなに近くにフ、フレイザーのかおがぁ(大汗))
ほとんど10cmも離れていない距離に彼の顔を感じた佐都子は心臓が破れそうである。

「Satoko?」
佐都子が固まっているとフレイザーが不思議そうに名前を呼んだ。
気がつけば、キーボードの 「H」をずっと押しっぱなしだったのである。
画面にはHがあふれんばかり……
「Sorry.」
気を取り直して検索を始めた。
検索ボタンを押してものの1秒、簡単に「腹黒商事」は見つかった。
場所は「中央区銀座3-4-6」どうやら輸入雑貨か何かを取り扱っている会社らしい。
佐都子は必要情報と地図をプリントアウトしてフレイザーに渡した。

「Remarkable!
すごいですね。I appreciate what you're doing. I do appreciate it. 心から感謝します。
フレイザーはどん底の状態から少し明かりが見えたからだろうか先ほどと見違えるように元気な表情を見せた。
「My pleasure 
どういたしまして
立ち上がったとたん、佐都子のおなかがギュルル〜ル〜と鳴ってしまった。

(は、はずかし〜 )
テレ笑いする佐都子にフレイザーが笑顔で返す。

「Shall we have dinner together?
よかったらディナーをご一緒しませんか
Actually I owe you.
あなたにお礼をしたんです。
佐都子はフレイザーの申し出にまた困惑してしまった。
これ以上彼といたら、もしかしたら彼に対して特別な思いが芽生えそうだったからである。

しかし佐都子が答えないうちにフレイザーは話を進めてしまった。
「I need to change my cloth. Please wait here. I'll be right back.
ちょっと着替えてきます。すぐ戻りますからここで待っててください。
そういい残すとホテルのエレベーターの中へ消えていった。

ロビーに残された佐都子は急に力が抜けてしまった。

(いったいなんていう一日なんだろう。ういろうの紙袋が破れただけで、どうしてこんなことになってしまったのかしら。…・)

そのとき茫然とつったっている佐都子の前を威勢よくロングコートの男性が横切っていった。彼はロビー中央で止まり、周りを見回した。そしてゆっくりとサングラスをはずしフロントの方に向かって歩き始めた。輝いた緑色の瞳がやけに印象的である。

(チーン♪) エレベータが到着した音とともに奥からスッテトソンハットが出てきた。
私服に着替え終わったフレイザーである。制服とうってかわってアウトドアスタイルだ。
赤いジャケットの下には青いポロシャツ、そしてブルーのジーンズ姿は別人のようである。

こちらに手を挙げて歩いてきたフレイザーはロングコートの男性とフロント付近ですれ違った。…・と、そのとき男性が振り返った。

「Oh it's you I didn't recognize you there like that. 
おっと、おまえじゃないか。服が違うからわからなかったよ。
「Ah…・Chicago PD Detective…・?
あなたはシカゴの刑事…で
「Vecchio. Raymond Vecchio. call me Ray.
ベッキオだ。レイモンド・ベッキオ レイって呼んでくれよ。
「Understood.わかりました。」
「Anyway you were right about the gun powder in the PD. I dig around and find out that's firework. I figured out who owns the warehouse. So I could solve my case earlier than I thought. here it is .Thanks. 
ところでおまえ正しかったよ。あの拳銃の火薬。調べた結果、アレやっぱり花火の火薬だった。よって花火の倉庫をあらったらあっさり犯人を見つけることができた。ありがとよ。」
レイは右手を差し出した。
「You are welcome.
どういたしまして」フレイザーが手を握り返した。

とにかくシカゴのベッキオ刑事は早口だった。よって佐都子はさっぱり二人の会話がわからない。ひたすら見ているだけだった。

すると、ぼーっとしている佐都子にレイが気がついた。
「Is she your sidekick? 
このねーちゃん、おまえの相棒か?
「No,no,no…She isn't a cop. She helps me. Meet you Satoko Sato.い
や違うよ。彼女は刑事ではないんだ。僕を助けてくれたんだよ。紹介しよう。佐藤佐都子さんです。
今度はレイは佐都子の方に向かって右手を差し出した。
「Well Nice to meet you…Ah…Otoko? 
はじめまして とこさんでしたっけ?

(ちょっと失礼しちゃうわね〜オトコじゃないわよサトコ!)頭の中で呆れながら
「No, I'm S・a・t・o・k・o. Nice to meet you too. Lay.」と挨拶した。
すると、レイも負けていない。「No,I'm NOT
LAY. I'm RAY.」 とRの発音を強調してみせる。 
(うー…発音気にしているのに〜)佐都子はちょっとムッときた。
しばし…沈黙。

レイと佐都子の気まずい雰囲気を察したフレイザーが慌てて話題を変えた。
「Ray, We are just going to dinner. Why don't you join us?
レイ、僕たち今から食事に行くんだ。一緒に来ないかい?

「OK」 レイは何も悩まず即、同意した。

(なんでこうなってしまうの…(涙)フレイザーだけでも充分緊張するのに、早口のレイまで。それにこの人、コワそうだし…あーやっぱり、早く帰るんだった。)
佐都子は後悔の念でいっぱいである。

しかし、レイの合流は佐都子にとっては好都合なこともあった。完全に主導権はレイに渡り、彼がいろいろ仕切ってくれたのである。

「So what do you feel like, Fraser?
なあ、フレイザー何食べたい?」
「Well I'm not familiar with this town. I'll just follow your lead thenこの辺はわからない。だから君についていくよ。」
佐都子も調子にのって「me either.」と適当に言った。
「Comen…・
おい、なんだよ〜おまえらー。」主体性のないフレイザーと佐都子にすっかりレイは呆れたようだった。

結局、レイの気分で近くの中華レストランに入ることにした。
しかし渡されたメニューが中国語でわからない。レイはしきりに佐都子に意味を聞くが佐都子にも当然ムリだ。
 するとゆっくりフレイザーがウェイターに向かって喋り始めた。
「○△■×□△☆×□◎?」
 ウェイターの顔はパっと明るくなり何か言いながら頷いている。
 そしてホール奥へ消えていった。

 レイと佐都子はあっけにとられてしまった。
R:「How did you do that?
おまえ何したんだよ?」
F:「I just went with the specials.
今日のお薦めを頼んだだけだよ。」
F:「My grandparents helped set up an English language library in China before the revolution. And they taught me the Cantonese / mandarin dialects when I was little
祖父母が中国で革命前に英語の図書館を設立するのを手伝っていたんだよ。それで僕は子供のころ広東語と北京語を教えてもらったんだ。」

(なんなのフレイザーって? 確かに普通じゃないとは思ったけれどほんと変わっている。) 佐都子とレイは同時に同じことを考えていた。

そしてちょうどスープが運ばれたときである。レイがこう切り出した。

「I have a bad news. 悪いニュースがあるんだ。」


                   (2003.3.23)

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悪いニュースっていったいなんでしょうか?続きはまた来週 (^.^)/~~~