Round-Robin From Japan  第2章  車内にて            第3章はこちら

 「Tokyo is lively, isn't it.東京は賑やかですね。」と佐都子の肩越しに外を見つめながら彼は言った。こうゆう場合は何かあいづちでも打ったほうがいいのだろうか?外国人とまともに話すのはほとんど初めてだったためあいづち一つにも悩んでしまった。(sureも変だし,certainlyもヘン,indeedかな?いやexactlyもいいぞ。いっそのこと,You are right.と言おうか)とくだらないことで悩んでいるうちにまた彼は続けて話し始めた。
「Warm sounds good to me right now.暖かいのはいいですね」と嬉しそうに春の日差しに目を細めている。
「どこから来たんだろう?この人…・」という好奇心が佐都子の口を開かせた。
「あ〜 Mind if I ask you?…・ah…Where are you from?すみませんどこからいらっしゃったのですか?

 すると彼は急に慌てて姿勢を正した。そして右手を差し出してきたのである。(ひょえ〜(涙)これって握手って意味?緊張するよー)と心の中で叫びながら佐都子も右手を出した。彼女より一回り大きながっしりとした手が彼女の手を包んだ。彼は握手をしながらこう言った。
「I'm sorry. Let me introduce myself. I'm Constable Benton Fraser, RCMP.」
「Pardon?」
「Uh, Royal Canadian Mounted Police」
(そっかぁーカナダ人なんだ。ふーん)と感心している場合ではなかった。(汗)自分も名乗らなければならないではないか。緊張のあまり自分の名前を忘れそうになった。(んな アホな) あ…言わなきゃ言わなきゃと焦ったら佐都子はよけい固まってしまったのである。一瞬の沈黙。(シーン)その沈黙は彼の柔らかな声によって破られた。

「You are Satoko Sato?」帽子を傾けて彼が聞いた。
(あら、やだっ!何でこの人私の名前知っているのよ?)佐都子はあっけにとられた。
「How do you know my name?どうして私の名前を知っているのですか?」
「I saw your pass case.あなたの定期入れを見たんです。」と青い目が優しく微笑んだ。
「And your dogs' name may be Shiro.そしてあなたの愛犬はシロですね
彼は佐都子の緊張を察したのだろう。動物の話題に話を持っていったのである。

「Your dog remains me of my wolf Diefenbaker. He is deaf.…あなたの愛犬を見るとわたしの狼 ディーフを思い出します。」と彼は愛犬(狼)ディーフとの出会いやディーフが何で耳が聞こえないかという理由を長々と説明し出した。
 彼はとても身振り手振りが豊かで、ひとりでギャグを言ってウけているので見ていて楽しかった。
 また本当に美しかった。額縁にでも入れて飾っておきたいほど綺麗だった。多分そう思ったのは佐都子一人ではないのであろう。同じ車両の乗客たちも彼の話している姿を興味深く見ているようだった。
 ぽかーんとしている佐都子に気づいた彼は急に申し訳無さそうに
「Oh- if I babble too much you have to tell me. あっすみません。わたしが喋りすぎでしたらおっしゃってください」と眉をひそめた。
「No, no, no. No,. . . Keep talking いやそんなことないです。どうぞ話続けてください」と佐都子は慌ててフォローした。英語がダメな佐都子はとにかく彼がこのまま喋ってくれているのが有難かったのである。

 そして彼がクマの罠に落ちてそのときディーフが先に落ちていた話を始めた瞬間、"新宿〜"という車内放送が流れた。(おっともう着いちまったよ〜)佐都子はあまりにも早く電車が着いたことに驚いた。人生始まって以来の東京―新宿間の速さではないか…。

「hear」と言って彼に知らせると「Thank you kindly.」とまた彼は優しく微笑んだ。
電車を降りるとそこには新宿の雑踏があった。佐都子は急に夢の世界から現実に引き戻されたようだった。

***** つづく                                         (2003.2.23)

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はぁ〜なんとか着きました。これでわけのわからんカナダ人ともお別れのはずですが…
さて、このあと二人はどうなるのでしょうか? 続きはまた来週 (^.^)/~~~