Round-Robin From Japan  第17章 Freezing        第18章はこちら                  English

男:「いつか来ると思っていたよ。さあ銃を置くんだ。」低い男の声が響き渡る。
日本語がわからないレイとフレイザーはきょとんとしている。
R:「おい、奴、何て言っているんだよ?」
頭を傾け少し上ずった声でレイが佐都子に囁く。
S:「Drop your gunsですよ…(泣)。」佐都子の声はもうほとんど半泣だった。
R:「All right.」レイがゆっくりと腰をかがめ銃を地面に置いた。

男:「おいそこの帽子!おまえもだ!」男はさっきより強い調子でフレイザーに銃口を向けて吠えるように言った。

F:「Satoko,Please.」今度はフレイザーが青い瞳をキョロっと佐都子の方に動かした。
S:「Hat you too.帽子 おまえもだです。」佐都子がそう答えると、フレイザーはおもむろに帽子を床に置いた。
男:「おい帽子を置いてどうすんだ。バカ!」男の声がよけい荒々しくなる。
F:「佐都子今度は何て言っているんだい?」
S:「He said You are moron.バカですって。」
R:「鋭いな。」レイが小声でそれとなく言う。
S:「銃を置けって言っているんですよ。」
F:「僕は銃は持っていないんだ。どうしてもっていうならカナダに戻らないと…。
でもナイフなら持っている。」
そう言うとフレイザーはサッと胸ポケットからナイフを出して見せた。

一瞬、上にいた男全員の目がフレイザーに集まる。
R:「おいっ!キャンプ道具出してどうするよ。」レイの額は汗がにじむ。
F:「だって僕は銃の所持を認められていないんだ?君もじゃないか?」
R:「うっせー。」

二人がごちゃごちゃ話していると一発の銃声が倉庫中にこだました。
男が威嚇のため発砲したらしい。
フレイザーはしかたなくホルスターを制服から外してそっと床に置いた。

次に男はフレイザー達に奥に歩いていくように指示した。
倉庫の奥にはもうひとつ扉があって、そこもまた倉庫の続きのようだった。
手下の一人がその扉を開くと冷たい空気がフっと広がる。
そこは冷蔵の倉庫だったのである。手下は強くフレイザー達の背中を押し、彼らは倒れるように中になだれこんだ。

フレイザー達が中に入ったのを確かめると、男がゆっくりと口を開いた。
男:「君たちは知りすぎたようだな。カナダでも同じように私のビジネスによけいな首をつっこんだものがいたよ。よって始末した。今度は人数が多いからな。あまり血なまぐさいのはやめておこう。ちょっと頭でも冷やしてもらおうか。」

そう男が言い終わると冷蔵庫の戸がバッターンと音を当てて閉まってしまった。

F:「oh dear。なんてことだ。」フレイザーが天を仰いだ。

冷蔵庫の中には鮭のダンボールがたくさんつまれていた。
天井には薄暗いランプがいくつかついており薄暗く庫内を照らしている。
冷気が3人の体を包むこむ。

R:「おい携帯持っているか?」
レイが白い息を吐きながら佐都子に聞いた。
大きく頷くと佐都子は慌てふためきながら携帯をかけたがつながらない。
ボタンを押す手もだんだんかじかんできて動かない。
もう涙でボタンの字もはっきり見えなくなってきた。
するとフッと何かが背中を覆うのを感じた。
びっくりして振り向くとフレイザーの茶色い制服の上着だった。
フレイザーが佐都子のために自分の上着を脱いだのである。
F:「これで少しは違うと思うよ。」シャツ姿になったフレイザーが静かに声を発した。

そんなフレイザーを見てレイが言った。
R:「なあフレイザー、俺も足腰が寒いんだよ。」

そう聞くとフレイザーはベルトのバックルをはずし始めた。
そしてズボンのボタンに手をかけたところで…・止まった。

F:「レイ、貸してあげたいのはやまやまだが、レディの前ではそれはできないよ。すまない。」
R:「…・・」

レイは寒気をだんだん強く感じてきたのかウロウロ歩き回り始める。

R:「フレイザーどうしよう?俺たちすぐ死ぬのか?」
F:「いやまだだ。僕たちが入って5分30秒しかたっていない。気温は-Oで急激に下がっている。まあだいたい大まかに言って37分だ。」
R:「やっぱり、俺たち死ぬんだ〜。」
F:「レイ、死なないよ。」

フレイザーが説得した調子で言うがレイには聞こえていないらしい。彼は悲嘆に暮れ始めた。

F:「レイ、もうちょっと楽観的な見方をしたらどうかな。僕たちにはディーフがついている。あいつは頼りになるんだ。」

レイがこりゃダメだという顔をして首を横に振った。
F:「もしかして倉庫のどこか抜け道があるかもしれないぞ。」
そうつぶやくとフレイザーが倉庫の壁に耳をあて、音叉を取り出して壁を打つ。
R:「なんでおまえそんなもん持ってんだよ!」
レイが呆れたように絶叫する。
F:「そんなのどうでもいいじゃないか。そんなことよりわかったのは…・完璧に封じ込めれれているってことだよ。」

レイはそれを聞いてガクっと肩を落として足元にある鮭の箱の上に座り込んだ。
一方、佐都子はぶるぶるフレイザーの上着を握り締めて震えている。それが目に入ると、レイは少し冷静になったように話し掛けた。

R:「さっきの男何て言ったんだよ?」

佐都子は逐一語、さっきの男が言ったこと…・つまりカナダで誰かを始末したことがあると言っていたことをレイに伝えた。

佐都子は震えているためにもうほとんど声にならなかったが、フレイザーにも聞こえたのだろう、落ち着いた表情が一転し唇をぎゅっと噛みしめている。

怒りにも似た苦悩の表情がフレイザーを覆った。

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場面は変わって、倉庫の外

外に一匹取り残されたディーフは首をかしげ倉庫の前でただずんでいる。
ときどき前足でガリガリと倉庫を開けようとするが所詮ムダだった。

しばらくしてディーフはクィーンと鳴き声をあげた後、ぱっと方向転換をして一目散に競馬場のほうに向かって走り出した。


つづく tbc

はたしてディーフは何を思いついたのでしょう。続きはまた来週(^.^)/~~~
                                                (2003.6.8)



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