Round-Robin From Japan  第16章  倉庫    

 レイの運転であっさり1時間で中山競馬場付近に着いた。
しかしあとちょっとというところで道路が込み合っていて動けない。レイは近くの空き地に車を寄せて泊め、三人と1匹はそこから競馬場まで歩いていくことにした。

中山競馬場は今日もレース開催日なのだろう、競馬新聞を持った人々が足早に彼らの横を通り過ぎ競馬場に向かっていった。
狼とフレイザーの姿はあまりにも場違いだったがレースに夢中な人々にそんな姿は目に映らないらしい。
誰も彼らには興味を示さない様子だった。

そうこうしているうちに競馬場の入り口にたどりついた。
10時を過ぎレースが始まっているのか中から人の歓声が地響きのように聞こえる。

「It seems to be interesting? Dropping by?」
レイがちょっと嬉しそうに言う。
「I'm with you。」
佐都子が思わず反応してしまった。
すると横で小さな咳払いが聞こえ、恐る恐る横のフレイザーを見るとちょっと怒ったような表情をしている。
「Okay Okay.」
レイが"よしよし"という仕草をしてフレイザーの背中を叩いた。

「Anyway Where can we find the warehouse?」
レイがはたと頭をかしげた。
目の前に広がるのは競馬場とそこへ向かう人々の流れだけで他に倉庫らしきものは何も無い。

フレイザーはぐるりと辺りを見回すと佐都子に視線を投げかけ、静かな声で聞いた。
「Satokko Could you give me an advice? Where is the udon restaurant?」
「There are many udon restaurants in the facility.」
「So Where do you think is the best?」
「I like the restaurant near the 45 pillar under the turf upper pavilion.」
「Well Let's that way.」

フレイザーが右手を挙げて、"こっちだ"というような素振りをしてスタスタと競馬場の外側を歩いて行く。レイ達も追いかけるように続いた。

芝スタンドの裏側に回ったところで急に視界が開け、森のような繁みが遠くに見える。
フレイザーはおもむろにポケットから単眼鏡を取り出すと片目をつぶって神経を集中して覗いた。
傍らにいるレイと佐都子はフレイザーの様子をそっと伺った。
しばらくしてフレイザーはうなづきながらつぶやいた。
「It'd appear a warehouse over there.」

「Pass me.」レイがフレイザーから単眼鏡を奪って自らも覗いてみた。
「You are right.」

「Will you pass me it ?」今度はレイにせがんで佐都子が単眼鏡を覗いた。
「I'm afraid, I can't see anything. I just see something glittering.」
佐都子が首を傾けた。
「Satoko…You look at wrong direction. it might be Ray's head.」
「I feel like going back.」

レイのむくれた表情に慌ててフレイザーが肩を抱き、取り繕うような笑みを浮かべるとレイをなだめ始めた。
「Ray, You are a really fabulous man. you don't have to care such a trivia thing. Let's move on.」

フレイザーはレイの肩を抱いたまま押すように倉庫方面に進んでいく。

雲ひとつ無い青空の下、3人と一匹は芝の香りを感じながら倉庫に近づいていった。

倉庫が100mぐらいに近づいたところでフレイザーの青い瞳が光った。
「no doubt 。」
フレイザーは倉庫の横に止めてある車を指さした。
それは数時間前に銀座で見た青いバンだった。

3人は身をかがめてゆっくりと近づいていった。

車の周りには人影がない。フレイザー達は薄汚れた茶褐色の倉庫の扉に身を寄せて耳をぴったりとつけて中の音を息を殺して聞いた。

「I heard nothing。」
「Ya。」

レイとフレイザーは見つめ合った。そして同時に頷くと一気にレイが倉庫の扉を引いた。

ドアは意外にも簡単に開いた。ガラガラと鈍い音を立てて半開きになったドアの奥を覗くとそこには真っ暗闇があるばかり。どうやら中に入らないと何も見えないらしい。

レイは胸のポケットから銃を取り出すと肩の上で構えながら迷わず中に足を踏み入れた。

レイに続いてフレイザーと佐都子が入った。そしてディーフが入ろうとした瞬間である。
倉庫の扉がバーンと鋭い音をたてて閉まってしまったのである。

「What happen?」
3人はぎょっとして振り返るともうそこには外の光はなく重い扉があるのみだった。

レイが必死の形相をして開けようとしたがびくともしない。
フレイザーも唇みながら腰を低くしてレイと一緒になって引くがそれでもだめだ。
扉の外では取り残されたディーフがクィーンと情けない鳴き声をあげている。

「we're trapped?」
レイがフレイザーに話し掛けると…・

倉庫内の電気が一斉についてパット明るくなった。

「待っていたよ。」

天井から低い男の声がこだました。それはどこかで聞き覚えのある…そう、3人が銀座の店でインターフォン越しに聞いたあの男の声だ。
フレイザー達が上を見上げるとそこには5,6人の男たちが機関銃の銃口をフレイザーたちに向け見下ろしていた。

**** つづく  tbc・・・・                                        (2003.6.2)

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さーフレイザーはどうなるのでしょうか・・・
続きはまた来週 (^.^)/~~~