Round-Robin From Japan  第15章  にんじん       第16章はこちら                    

フレイザーが箱についたホコリを指でぬぐうとペロっと舐めた。

R&S:「ぎょえ〜 またかよ〜」 レイと佐都子は顔をしかめ身を引いた。

R:「何か見つけたか?」
  レイがフレイザーの顔を不思議そうに覗き込む。
  フレイザーはかすかに確信したようにうなずいた。
F:「ドラッグだよ。レイ。」
R:「じゃあ、こいつら毛皮を売っていると見せかけて陰で薬(ヤク)やっているのか。」
F:「ありうるな。」
R:「でも、どこから持ってきたんだ?」

  フレイザーは辺りを見回し男達の足跡を中腰になって追った。

F:「あっこれは!」 フレイザーがまた小さなかけらを見つけてつぶやく。
R:「なんだ?」
F:「人参だ。」
R:「はっ?」
F:「人参だよレイ!」 と言うとそのかけらをまたもやつまんでペロッと舐めた。

R&S:「ぎょえ〜……・・」 レイと佐都子は思わず目を手で覆わずにはいられない。

R:「人参だからなんだってんだよ…。」レイは眉をひそめ、まるでゲテモノを見るかのようにフレイザーを見た。
F:「新鮮だ。」
R:「そんなことより…」
F:「そんなことより?…レイ、これは重要だよ。ここは東京銀座のショッピング街だ。ここに人参のかけらがあるのはおかしいと思わないかい?しかも新鮮だ。」
R:「はぁ」     レイが半分、信用しかけたように鼻から息を抜いて答える。
F:「きっと彼らは新鮮な人参のある場所から来たに違いない。そして…・」
R:「そして?」

  フレイザーはそう言うと直立して目を閉じ息をスーっと吸って鼻をピクピクさせた。
  レイと佐都子はただただあっけにとられるばかりである…。

F:「おい何寝てんだよ?」
R:「寝ているんじゃないよ。臭いを思い出しているんだ。彼が近づいてきたとき空気の臭いが変わった。何か青い…そうだな…草木の…それも背の低い……えーと ☆ 芝生だよ。レイ。芝生の臭いが急にしたんだ。」
フレイザーは目をぱっと見開き、目を輝かせてうっすら笑みを浮かべてそう言った。
R&S:「……・」

R:「芝生ねぇ…。」
  レイは肩をすくめ呆れたようなポーズをする。

F:「そしてこれを見てくれ…人参のかけらの側に白い乾いたパスタのようなものも落ちている。これも何かの手がかりになりそうだ。」

  フレイザーがおもむろに拾って、佐都子たちに見せた。
  確かに干からびたパスタのようである。薄暗い倉庫内ではわからないがパスタより少し、太めで平たい感じだ。

S:「これ、うどんですよ。」
  さっきまで黙っていた佐都子が、思いついたように声を発した。

F&R:「うどん?」  フレイザーが長い睫毛をサッと動かして佐都子に視線を投げる。
R:「なんだよ。それ。?食いもんか?」  レイの睫毛も動く。
S:「はぃ 日本のパスタみたいなもんです。小麦粉で作られるんです。」


F:「うどん、人参、芝生…これがキーワードか。これらから浮かぶ場所は…」
  フレイザーがチラっとレイの顔を伺う。

R:「では…ここで thinking time♪」 レイがおどけたように口元を緩める。
F:「番組が違うよレイ。真面目に考えてくれ。」
R:「…・」

  フレイザー達はしばし腕を組んで考え始め、薄暗い倉庫の中で立ちすくんだ。
  考えること5分…・

F:「佐都子、競馬場でうどんとやらは食べられるのかい?」
フレイザーが穏やかな声で沈黙を破った。

F&R:「競馬場ぉー?」レイと佐都子が同時にハモる。
S:「ええ・・多分食べられると思います。」 
F:「そうか、やっぱり。それでさっきの人参にはえんばくや飼葉の匂いもしみついていたのか…。」
フレイザーは少し頭を傾けて親指で右の眉を掻いた。

R:「競馬場にヤクがあるのかよ?」
F:「競馬場の厩舎の近くの倉庫をあたってみたらどうかな?」
R:「でも、どこのだよ?」

F:「まずダートではなく芝のある競馬場だ。そして人参の新鮮さからいって近くて、今レースの行われている競馬場に違いない…。また倉庫のあるスペースを考えると都会ではないはずだ…。」

  フレイザーがたらたらと述べる間、佐都子は頭の中でダートでかつ都会にある川崎競馬場や大井競馬場を消去していった。

F:「佐都子、今週、重賞レースの行われる場所はどかわかるかい?」
S「弥生賞が確か中山競馬場であると思いますが…。そして芝があります。」
あまりにも滑らかに佐都子が答えるのでレイが目を丸くする。
R:「おまえ詳しいな。」
S:「そういうことは今は関係ないですよ。」
F:「そこは近いの?」 
S:「レイさんの運転ならそんなに遠くはないと思います。」
R:「何か意味ありげだな。」
S:「いえ別に…」(だって信号無視なんだもん…・)と言おうとしたがやめた。

F:「道はわかるかい?」
S:「ええ なんとか…東京ディズニーランド方面です。」

R:「じゃあ、行くぞ!」レイはハラリとコートを翻して振り返ると出口に向かった。

  シャッターを一気に開けると3人と一匹は外へ出た。
  少し強くなった日差しにフレイザーは眩しそうに瞳を細める。

  先ほどより通りには人が増え、銀座の街並みは活気づいてきたようだった。

**** つづく


さあて…手がかりをつかんだフレイザー。あともうちょっとで事件解決?
                                        (2003.5.25)
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