大切なこと
by チャロ さん
いつも通り、騒がしい署内。その中で、神経を集中させ、ひたすら彼の帰りを待つ。 その彼の名は、ベントン・フレイザー。 自分と彼は、仕事上のパートナーであり、かつ親友だ。初めの出会いは、状況からしてあまり良いと言えるものではなかった、が、様々な危機を共に乗り越え、絆を深めていった。 危機・・・最大の危機は、ヴィクトリアの出現。 本当、思い出すだけで腹が立つ!! 彼女の所為で銃・・い、いやもう過去のことをこだわるのは止めよう。 オヤッ、どうやら、思わず唸ってしまったらしい。イレーンがビックリしてこちらを眺めている。 恥ずかしい。とりあえず床にある書類を拾って読む振りをすることにしよう。 えーと、何だっけ。そうそう、大切なのは過去じゃない。現在だ。 今、彼ベントン・フレイザーは自分の為に出かけているのだ。 それに対し、自分のできる事。それは、彼の帰りがいかに嬉しいものであり、待ちわびていたのかを一目で分かってもらえるようする事さッ。フッ ってそろそろハードボイルド喋り飽きてしまたんだけれど。 早く〜 帰ってきてよ。もう、耐えられないよー ウン?芳しい匂い!と共に彼の気配が。ドアが開く、そこに・・・ 「ただいま、ディーフ!ほら、お前の好きなスペアリブだよ。この間は、仕事上とはいえキツイ事を言っちゃったから。これ、お前の健康を考え、作って貰った特性リブなんだ・・・」フレイザーは話しながら、尻尾をバタバタ振り回し、涎をたらさんばかりのディーフに包みを差し出した。 そこへイレーンがやって来、フレイザーの説明そっちのけでガツガツ食するディーフ横目に、小声で言った「ちょっとフレイザー。ディーフなんか変だったわよ。遠い目をしたり、突然唸ったり。それも、まるで狼みたいにドスがきいているの」 「・・・イレーン。ディーフェンベーカーは狼なんだよ」 「・・・」 「な、なんだこれは!」席に戻ったレイの叫びにより、沈黙は破られた。 彼の手にある物。それは、夕食を想像し、お腹の空いたディーフが思わず噛んでしまった物。レイが苦心して書いた書類の残骸だった。 教訓:動物が側に居るときは、大切な物は床に置いてはいけないし、落としっぱなしもダメである。 END |
チャロさん より |